たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

或る窓辺

 

前世があるとしたら、の話。

 

私は

靴職人のドイツ人男性

だったことがあるらしい。

 

いくつかある前世のうちで

今の私に影響を及ぼしている人

ということらしいけど

妙に納得するところがある。

 

こどもの頃

なりたかった職業は

靴屋さんか帽子屋さんだった。

 

なぜかソーセージがとても好きだし

お酒を飲むなら断然ビールだし

歯磨き粉はセッチマだし

黄色いビートルにも乗っていたし

次に車を買うならやっぱりビートル

と思っている。

 

何冊も読み耽ったエンデも

確かドイツ。

 

もしも

ドイツの靴職人時代の私の名残が

こんな好みに現れているとしたら

なんだか面白い。

 

影響を及ぼしているのは

なにも趣味嗜好だけではない。

 

とにかくこの人

仮に名前を「Nico」と呼ばせてもらう。

Nico

とても孤独だったらしい。

 

職人気質で

人付き合いもあまりせず

ずっとひとりで

コツコツコツコツ

靴を作っていたNico

 

少し細身で

ちょっぴり猫背で

胸当てがあるタイプのエプロンを付けていて

靴をつくるための革や道具に囲まれた部屋は

少し狭いけれど

整頓されていて機能的で居心地がよく

窓から差し込む光が靴を照らし

その光の筋に埃の粒がチラチラと舞う中で

ラジオから流れる音楽を聴きながら

黙々と靴をつくるNico

 

想像の中のNico

靴職人としての誇りを持ち

自分が安心できる居場所を守りながらも

もしも

違う人生を歩んでいる自分がいたなら

そんな空想をすることも

時には

あったんじゃないだろうか。

 

そんなNico

とてもシンパシーを感じる。

 

ひとりでいられる空間や時間がないと

苦しくなるし

集団が苦手だったり

孤独を

寂しくもあり

それをまた友のように感じるところも

Nicoの影響があるかもしれないそうだ。

 

そして今

私が

女性で

この時代の日本に生まれたのは

自由意思を持って

色んなことにチャレンジできる環境で

やりたかったこと

叶えたかったことを

もりもりとやっていく。

そんなミッションを

Nicoから与えられているから

ということらしい。

 

前世を

信じるか信じないか。

 

それはあまり重要なことではなく

私にどこか似たNicoのような人が

違う時代や国にきっと居て

今の時代や違う国のどこかにも

きっと居て

みんな

ドタバタジタバタしながら

何かを成し遂げたい

と思っているとしたら

なんだか愛おしい。

 

私はNico

時々背中を押されながら

Nicoが夢見たかもしれない

もうひとつの扉を

一緒に開けたいと思っている。

 

一緒に行こうね、Nico