たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

どこでもドアの向こう側

 

電話の向こうの彼女は

多分酔ってた。

 

酔っぱらいの話は

だいたいいつも長くて

だいたいいつも

とりとめがない。

 

そしてなんだか

いつも切ない。

 

楽しみにしてたテレビドラマをひとつ見送って

ご無沙汰の

その間

彼女の身に起こった現実のドラマを

ただひたすら

注意深く聴く。

  

「しあわせ」

という言葉を

呪文をかけているかのように

確認するかのように

納得しているかのように

何度も何度も

繰り返し

言葉にする。

 

本当に

しあわせなのかもしれない。

 

でも

もしもそれがSOSだったなら

ちゃんと

「さみしい」って

言葉に出させてあげられたらよかったのかな。

 

答えはわからない。

 

無力だ。

 

電波でつながってた90分少々。

 

こんな時に

どこでもドアがあれば

一緒に酒でも飲んであげられるのに。

 

約束をひとつして

電話を切った。

 

夕べ泣いた彼女が

今日

笑っていますように。