たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

 

音を消したテレビ画面に映る発光生物たちが

四角い暗闇の水槽の中でゆらめきながら光る。

 

生物たちが発光する理由が生死との表裏一体だから

美しいんだろうか。

 

深海は神秘の世界。

 

最果タヒ

夜空はいつでも最高密度の青色だ』を

久々にながら読みしていると

おもむろにシンクロする

映像と言葉。

 

ウルトラマンのカラータイマーのように

蜘蛛の巣に捕らわれて

命の灯火が点滅する雄ホタル。

 

それを

蜘蛛から巧みに奪い

生きたまま補食する雌ホタル。

 

そして

毒を体内に取り込み

生きるエネルギーに変えて

なお

発光する命。

  

地上もまた

サバイバル。

 

あらゆる美しさを目の当たりにした時

人は

知らないということさえ知らないままの方が

その美しさを

心から美しいと感じられるのだろうか。

 

暗闇がなければ

光は見えない。

 

生温い夜のベランダに腰掛け

見上げた夜空に浮かぶのは

めがねを外した視力のせいで輪郭を失った

か弱い線香花火のような星。

 

裏側に隠された秘密を知っても

なお

美しいと思えるものが

何なのか知りたい。