たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

イカロス


分厚い灰色の雲をこじ開け
まるで奇跡なんじゃないかと思うような
黄金色に光る夕陽。

ビルの窓も
高速を走る車も
田んぼも家も山も
街が
全部全部光っている。

その美しさに
一瞬で目も心も奪われてしまった。

私の顔も照らされて
まぶたに残った緑色のチカチカ。

飴に黄金糖って名前をつけた人も
こんな夕陽を見たのかな。


イカロスの気分。
 
 
 

螺旋

 

なんだか

懐かしい場所に戻ってきた感じ。

 

上から見たら同じところにいるようでも

横から見たら

違うところにいる。

 

きっと螺旋階段のように

ぐるぐるぐるぐると回りながら

少しずつ空に近づいていく。

 

ここは

私の心の中。

 

ただいま。

今扉を開けるよ。 

 

 

 

遠雷

 

気がつくと

天窓から差し込む光が途切れていていた。

 

パソコンの液晶画面の明るさと集中していたせいで

部屋が随分と暗くなっていたことに気づかなかった。

 

パソコンの時刻表示を見たら

まだ17時台。

 

遠くから少しずつ近づいてくる雷の音がする。

 

久しぶりに

雨が降るのかもしれない。

 

自由で

縛られず

伝えようとしない言葉たちだな

と感じていた詩が

偶然か意図的かはわからないけれど

あるルールにそっていたことに気づいて

驚いて

だから

何かが伝わるんだと知った。

 

知らなかったことを知るということ。

 

世界が変わるということは

こういうことなんだな。

 

雨がやってきた。

 

 

  

光の輪郭

 

もしもタイムマシンがあったら。

 

もしもタイムマシンがあったら

あの頃の自分と話をしてみたいと思う。

 

自分が

一番自分であったあの頃。

 

昨日

その当時よく一緒に行動していて

いろんな刺激を与えてくれた人が

今年の初めに亡くなっていたことを知った。

 

最後に会ったのはいつだったっけか。

 

確か

久しぶりに会ったツレと一緒にいて

駅前で

弾き語りをしている若者にリクエストしたりなんかしながら

自動販売機で

あんまり買うこともなくなっていた缶コーヒーを

昔みたいに買ってたとき

もう

呼ぶ人も少なくなった名前を不意に呼ばれて振り返ると

その人が笑って立っていた。

 

3人が揃うのはものすごくレアで

いやあ久しぶり

すごい偶然

こんなところで会うなんてね

元気にしてんの

なんて話しながら

昔とは同じでいられないことをみんな分かっていて

じゃあまたいつかね

って感じで

軽く別れた。

 

それが多分

最後。

 

そのいつかは

永遠になくなってしまったんだな。

  

その人は

出会った時から亡くなるまで

ずっと

その人の道を歩いていた。

 

どんな気持ちで

その道を歩いていたんだろう。

 

その人の死を

昨日知った

そのことの意味を考えている。

  

リンダ、うたってる?

あの笑顔で

そう問いかけられている気がする。

 

 

 

アイデンティティ

 

大切すぎて

マトリョーシカのようにしまい込んでしまった思いが

本当にそうだったのかどうか

ふと

わからなくなってしまう時がある。

 

奥深い場所に

誰にも見つからないようにそっと置いて

いつか

そのうちいつかと。

 

愛情過多で

根腐れしてしまわないうちに。

 

なかったことにしてしまいたくない情熱。

 

これは

アイデンティティの問題。

 

 

 

 

 

 

 

あの海


なんだか海に行きたくなったけど
目を閉じて
今まで知っている
たくさんの海を思い出すことで折り合いをつけ
大事なことがあることに気づいたからには
それを実行する計画を立てることを優先した。

ちょうど
今読んいる小説の主人公が
お盆に
海が近くにあるおばあちゃん家に行って
あの
ジリジリする
夏の海を満喫しているシーンになったおかげで
イメージの中
私も夏の海を体感する。

新たな展開を予感させる物語の日付は8月12日
というシンクロ。

海に行かなかった
今と
これからの私への
夏からの贈り物だと思った。

カバンに入れていたペットボトルを取り出し
テーブルに置いたら
赤い液体の中の小さな泡が
いくつもいくつも
ぷくぷくと揺れながら浮かんでいく。

あっ
海みたい。


 

すべてわかる必要はないのかもしれない

 

ことばに意味を感じる時

何らかの意思が反映されている。

 

状況に意味を感じる時

何らかの意思が反映されている。

 

それは

他の誰でもなく

まぎれもない自分の意思だ。

 

敏感でもいいんだよ。

 

違和感は

未来を照らすサーチライトです。

 

だから

怖がらないで

もっと近くにおいでよ。