たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

花火

 

ふたりでバスに乗って

ぎゅうぎゅう詰めの

つり革の

揺れる身体と

笑い声。

 

楽しいことが始まる時の

あの感じ。

 

バスの窓に貼ってある広告を見て

人体の不思議展は嫌いだ

と言っていた君。

私は

ちょっと行ってみたかったな。

 

河川敷の

草をかき分けた先に

ちょうどいいくらいの穴場があって

そこから

何年かぶりの花火を見た。

 

沢山の人に紛れながら歩く帰り道

少し前を歩く君が

時々振り返って

それから

手をつないだんだっけ。

 

迷子になるよ

とかなんとか。

 

よくある

ちょっとした沈黙。

 

つないだ手をぶんぶん振りながら

冬に蟹を食べに行った話をして

その蟹が

いかに美味しくて大きかったかを

伝えるふりをして

手をほどいたのは

私。

 

ごめんね。

  

嘘が上手なら

良かったのかな。