たとえば胸騒ぎ

私を構成するいくつかの、あの時と今とこれからと。あるいはそのカケラ。

足の爪

 

足の爪が

気づかぬうちに

すっかり伸びていた。

 

風呂上がりに

ヨガのポーズのような姿勢になって

爪を切る。

 

いつから

夜に切ることに

抵抗なくなったんだっけ。

 

罪悪感のカケラもない。

 

そういえば

おじいちゃんの足の爪を切ってあげたことがあった。

 

亡くなる少し前のことだった。

もう

随分昔のことだ。

 

自分以外の人の足の爪を切ったのは

あれが

はじめてだった。

 

あの時

おじいちゃんの体温を感じながら

足の爪には

人生が現れているんだと思った。

 

年輪のようになった

大きくて固い爪。

 

こんぺいとうが

大好きだったね。

 

優しい顔しか

思い出さないよ。